予防接種 Up to Date
•小学校入学前に任意ワクチンとして3種混合ワクチンとポリオワクチンが勧められるようになったことについて
2024年3月現在日本では、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオのワクチンを、4種混合ワクチン(定期接種)として、およそ1歳半までに合計4回接種しています。しかし、ワクチンで得られた免疫も徐々に低下し、小学校入学前には百日咳などにかかってしまう可能性があることがわかってきました。わが国でも2018年8月より、小児科学会が就学前のお子さんに対する三種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風)ワクチンとポリオワクチンの5回目接種の推奨を始めました。日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」外部リンク(2024年3月時点ではどちらも任意接種)。「5回接種」はWHOでも推奨されており、10代、あるいは成人でもう1回接種を行っている国もあります(WHO Immunization Data portal 外部リンク)百日咳に関しては、2018年および2019年の感染者報告によると、感染した人のうち6割以上が小中学生のこどもたちでした。全数報告サーベイランスによる国内の百日咳報告患者の疫学(更新情報)外部リンク。また、感染者のうち約8割の人が小児期に4回の三種または四種混合ワクチンを接種していました。つまり、定期接種で三種または四種混合ワクチンを接種しても数年で免疫が低下しているということです。
ポリオに関しても、接種から時間が経つと抗体価が徐々に低下し、発症のリスクにさらされます。もっと知りたいポリオ (vaccine-net.jp) 外部リンク
5回目接種に対して使用するワクチンについては、三種混合ワクチンと単独のポリオワクチンを合わせると実質的には四種混合ワクチンと同じです。しかし、四種混合ワクチンは2024年3月現在、4回の定期接種のみでしか使用できないため、5回目は任意接種として三種混合ワクチン(トリビック®)とポリオワクチン(イモバックス®)をそれぞれ接種します。
• ポリオとは ポリオとポリオワクチンの基礎知識|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
かつて「小児まひ」と呼ばれ、国内でも大きな流行がありました。ワクチンが導入されるまで、毎年何千人もの患者さんや死亡者が出ていました。ポリオウイルスに感染しても、多くの場合は目立った症状はありません。きわめてまれに、麻痺(手足を動かすことができない状態や呼吸がしにくい状態)がおこり、一生障害が残ることがあります。特別な治療法はありません。ワクチン接種により予防ができる病気です。国内のポリオは根絶されましたが、世界の一部の地域では依然として新しい患者さんが発生しています。それらの地域から国内にポリオウイルスが持ち込まれる可能性があるため、ワクチン接種により免疫を高く維持する必要があります。
•百日咳とは
突然激しく咳き込み、その後ヒューという笛を吹くような音が聞こえる咳が特徴です。生後3か月未満の赤ちゃんでは、息が出来なくなり、ひどい場合は死亡することもあります。終生免疫(一度感染したら次はかからない)の感染症ではないため、風邪のように何度でも百日咳にかかる可能性があります。国内では、毎年約3,000の小児科機関から数千人の患者さんが報告されています。百日咳について こどもとおとなのワクチンサイト (vaccine4all.jp)外部リンク詳しくは、学会のHPで日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール、標準的接種期間・日本小児科学会の考え方・注意事項(外部リンク)をご参照ください
•5種混合(ジフテリア、百日せき、破傷風、不活化ポリオ、ヒブ)ワクチン接種開始について2024年(令和6年)4月1日から、5種混合(ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオ、ヒブ)ワクチンが定期予防接種に導入される予定です。2024年4月になってから第1回目の接種を受けるお子さんは、5種混合ワクチンを受けることができますが、3月中から第1回目の接種を受けるお子さんは、これまでのように4種混合とHibワクチンを同時接種で受けます。4種混合とHibワクチンは初回接種で3回、追加接種で1回接種しますが、いずれも同じワクチンを受けることが基本ですので、現時点では3月までに4種混合ワクチン・Hibワクチンの第1回目の接種を受けるお子さんは、4月以降もそのまま4種混合ワクチンとHibワクチンを受けることになる予定です。転居などで途中から当院で接種を行う場合は、母子手帳で前にどのワクチンを接種したかを確認し、間違いがないように接種を進めてまいります。自治体からの通知が届き、詳細が確定次第、改めてお知らせします。
•15価肺炎球菌結合型ワクチン(バクニュバンスバンス®)について
2024年3月現在当院では、小児の定期接種において13価肺炎球菌ワクチン(プレベナー®)を公費負担で行っております。15価肺炎球菌ワクチン(バクニュバンス®)を定期接種で使用しようという動きがあり、定期接種法で認められ次第、15価へ切り替えとなります。詳細がわかり次第改めてお知らせします。
補足 2023年6月に沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(バクニュバンス®)の小児適応が承認されました。追加された適応は「小児における肺炎球菌(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F)による侵襲性感染症の予防」です。 肺炎球菌は、抗原性により90種類以上の血清型に分類されるグラム陽性球菌で、主要な呼吸器病原菌の1つです。この菌が髄液や血液中に侵入した場合には、敗血症や髄膜炎などの侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こします。我が国において2023年11月より小児の定期接種では、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13プレベナー13®)が使用されてきました。PCV13による小児の定期接種が実施されてもなお、小児の侵襲性肺炎球菌感染症罹患率は依然として減少していないことも重大な公衆衛生上の問題となっており、海外では5歳未満の小児の侵襲性肺炎球菌感染症の原因となる主要な血清型が22Fおよび33Fであると報告されています。バクニュバンス®は、PCV13に含まれる血清型に加え、新たに2種類の血清型(22Fおよび33F)へも有効な15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)です。接種スケジュールの中で、PCV13により接種を開始後、途中でPCV15接種に切り換える場合は、残りの接種はPCV15になるようです。
•留学や海外旅行へ行くときのワクチンについて
海外渡航者の予防接種には、主に二つの側面があります。一つは、入国時などに予防接種を要求する国(地域)に渡航するために必要なものです。もう一つは、海外で感染症にかからないようにからだを守るためのものです。予防接種の種類によっては、数回(2~3回)接種する必要のあるものもあります。海外に渡航する予定がある場合には、なるべく早く(できるだけ出発3か月以上前から)、接種するワクチンの種類と接種日程の相談をしてください。
海外渡航のためのワクチン 厚生労働省検疫所 外部リンク