麻疹(はしか)から赤ちゃんを守るために

麻疹(はしか)の基礎知識

🔹 最新の流行状況(2026年4月17日時点)

・2026年は麻疹の報告が増えており、 第1〜16週の全国累積は362例 に達しています(速報値)。
これは近年で最も多い水準で、海外からの持ち込み例に加えて、国内での二次感染も確認されています。
・東京都の公式データ(2026年4月23日更新)でも、 10代後半〜30代前半に患者が集中しており、さらに 30〜40代にも一定数の患者が報告されています。(東京都感染症情報センターより)
📣 日本小児科学会は2026年4月1日付で注意喚起 を発表し、「1歳・就学前の2回接種を確実に」「免疫のない成人は早めの接種を」と呼びかけています。

🔹 ① 麻疹とは

・麻疹(はしか)は麻疹ウイルスによる感染症で、空気感染するため非常に感染力が強い病気です。 免疫のない人が同じ空間にいると、約90%が感染すると言われています。

🔹 感染経路

・空気感染(最も強い) ・飛沫感染 ・接触感染
・咳やくしゃみで飛んだウイルスは、空気中に最大2時間残存します。

🔹 症状の経過

潜伏期間:10〜14日(7〜21日)
前駆期(2〜4日) ・高熱 ・咳 ・鼻水 ・結膜炎 ・コプリック斑
発疹期 ・発熱開始から2〜4日後に発疹 ・顔 → 頭 → 体 → 手足へ広がる ・発疹は4〜7日続く ・
 発熱は通常 5〜8日間 続きます
その他の症状 ・下痢(早期から出現し、長く続くことも)

🔹感染力のある期間

発疹の4日前〜発疹後4日まで

🔹 出席停止(日本の基準)

解熱後3日を経過するまで (学校保健安全法)

🔹 合併症

・麻疹患者の約30%に合併症が起こります。 ・肺炎 ・中耳炎 ・下痢 ・脳炎(1/1000)

🔹 ② 麻疹の免疫(ワクチン接種)

🔹ワクチンの効果

1回接種:93〜96% 2回接種:97〜99%

🔹 2回接種後は追加接種は不要

・抗体が低く見えても、 記憶B細胞が残っているため、再曝露時に迅速に抗体を作ることができる。 → CDC・WHO・日本のマニュアルすべてで「追加接種は不要」。

📘 麻疹:2026年流行から見える「年代別リスク」の理解

日本では接種制度が変わってきたため、年代によってワクチン接種回数に差があります。
1972年10月〜1990年4月生まれ(36〜53歳) → 1回接種のみ。キャッチアップなし。
1990年4月〜2000年4月生まれ(26〜36歳) → 制度上1回接種。キャッチアップを受けていない人が多い。
2000年4月〜2006年4月生まれ(20〜26歳) → 制度上1回接種。任意で2回受けた人もいるが個人差が大きい。
2006年4月以降(19歳以下) → 2回接種制度で免疫は安定。

― 接種回数だけでは説明できない“実際のリスク構造” ―

🔹 なぜ今回(2026年)の流行は10〜20代に多いのか
2026年の流行では、東京都の年齢別データでも 10代後半〜30代前半に患者が集中 しています。 この世代は制度上「2回接種済み」であることが多いにもかかわらず、 以下の理由で“免疫が不十分な人”が一定数存在します。

免疫減衰

2回接種後でも、抗体価は年々低下します。
抗体価は 年間4.8〜9.7% 低下するという報告
接種後 10〜20年 で防御レベルを下回る人が出る
日本の若年成人でも、2回接種済みなのに IgG基準値を満たさない例が多
特に 2001〜2011年生まれ(現在15〜25歳) は、 ちょうど「免疫が落ちてくる時期」に該当します。

② 自然ブースターが得られない時代

麻疹が排除状態になった日本では、 野生株に触れる機会がほぼありません。
As a result, 自然感染による免疫強化(ブースター)が起きない → 抗体が下がり続ける → 若い世代でも免疫が弱くなる

若年層は暴露機会が多い(学校・大学・職場)

麻疹は空気感染で非常に伝播力が強く、 学校・大学・寮・職場 などの集団環境は感染が広がりやすい。
10〜20代は 授業 部活動 アルバイト サークル 寮生活 など、密な接触が多い生活構造 にあるため、 感染が一気に広がりやすい。

輸入例が若年層に偏っている

東京都の遺伝子型データでも、 B3・D8などの輸入例が複数確認されています。
輸入例の年齢中央値は 10代後半〜20代前半
理由は 留学 海外旅行 国際交流 ワーキングホリデー など、若年層に渡航機会が集中しているため。

輸入例が若年層で発生 → 学校・大学で拡大 という構造が起きやすい。

制度上は「2回接種=安全」と説明されがちですが、 今回の流行はそれでは説明できません。

10〜20代に患者が多い理由は、 ①免疫減衰、②自然ブースターの欠如、③集団暴露、④輸入例の偏り という複合的要因によるものです。

🔹36〜53歳(1972〜1990年生まれ)が実際の患者が少ない理由
制度上は1回接種世代で免疫ギャップとされますが、実際の患者数は若年層より少ない状況です。 その理由は以下が考えられます
① 1回接種でも93〜94%は防御されている 完全な未免疫者ばかりではなく、感受性者は6〜7%程度で
② 若年層ほど集団暴露が少ない 学校・大学・寮などの環境にいないため、感染の“場”に触れる機会が少なくなります。
③ 海外渡航の接点が若年層に偏る 輸入例の中心は若年層で、中年層は渡航頻度が相対的に低い傾向があります。

🔹 修正版:年代別の“実際のリスク分類”(2026年)

2026年の流行では、制度上の接種歴と実際の患者数が一致していません。 以下は“実際のリスク”に基づいた年代別の整理です。

年齢(2026年)制度上の接種歴実際のリスク主な理由
15〜25歳2回接種最も患者が多い免疫減衰、集団暴露、海外渡航、自然ブースターなし
26〜36歳1回+一部2回高リスク感受性6〜7%、免疫減衰、社会活動
36〜53歳1回制度上は高リスクだが患者数は中程度免疫不十分だが暴露機会が少ない
53歳以上自然感染低リスク終生免疫
  1. 追加接種を考慮すべき人とその理由

麻疹ワクチン追加接種を考慮すべき人とその理由

🧑‍⚕️ 医療・保育・教育関係者 理由:患者・園児・児童との近距離接触が多く、集団内での二次感染を防ぐ必要があります。 医療従事者は出生年に関わらず2回接種+免疫確認が国際標準です。
📖 1972〜2006年生まれ 理由:1972〜1990年は1回接種のみで感受性6〜7%。 1990〜2006年は2回目未接種の可能性があります。 さらに、2回接種済みでも接種後10年以上で免疫低下が起こりうるため、最も確認が必要な世代です。
👩 妊娠を希望する女性 理由:妊娠中はMRワクチン接種不可のため、妊娠前に免疫確認が必要です。 風疹対策の観点からも重要です。
🌍 海外渡航予定者 理由:輸入例の中心は若年層で、渡航先での暴露リスクが高くなります。 国際基準では2回接種が必須です。
🔍 接種歴が不明な人 理由:口頭申告は免疫証明にならず、文書で確認できない場合は未接種として扱うのが原則です。
🎓 大学生・専門学校生 理由:寮・講義室・部活動など集団生活で暴露リスクが高く、10〜20代の流行中心と一致します。
👨‍👩‍👧 免疫不全者の家族・同居者 理由:本人はワクチン禁忌の場合があり、周囲が免疫を持つことで間接的に守る必要があります。

接種回数だけではリスクは判断できません。
10〜20代の流行は、waning immunityと暴露機会の偏りが主因です。
1回接種世代は制度上のリスクは高いものの、実際の患者数は少ない傾向があります。
追加接種を考慮すべき人は、暴露リスク、免疫低下、妊娠計画、渡航歴などの要因で決まります。

曝露後の緊急対応

・麻疹患者と接触した場合の対応は、 ①妊娠の有無 ②年齢(月齢) ③接種歴 ④免疫状態(免疫不全の有無) で大きく変わります。

🔹妊娠していない成人(授乳中を含む)

1)MRワクチン2回接種済み(記録あり)

  1. 追加接種は不要
    ・記憶免疫があるため、抗体検査も不要
    ・経過観察のみ

2)1回接種のみ/接種歴不明

  • 72時間以内:MRワクチン接種が第一選択
    ・授乳中でも接種可能
    ・72時間を過ぎた場合は、ワクチンの効果が不確実になるため、 免疫グロブリン(IG)を検討

3)免疫不全(ステロイド大量投与・化学療法など)

  • MRワクチンは禁忌
    6日以内に免疫グロブリン(IGIV)
    免疫不全者は重症化リスクが高い

🔹 妊婦

妊娠中はMRワクチン禁忌

  • 麻疹に曝露した場合は  6日以内に免疫グロブリン(IGIV) が唯一の選択肢
    胎児への影響を考慮し、迅速な対応が必要
    産後はMRワクチン接種可能(授乳中も可)

🔹 乳児(0〜11ヶ月)

1)0〜5ヶ月(6ヶ月未満)

  • ワクチン接種不可
    6日以内に免疫グロブリン(IGIM)
    乳児は重症化しやすく、最優先で保護が必要

2)6〜11ヶ月

  • 72時間以内:緊急ワクチン接種(MMR)可能
    ただしこれは「補足的接種」であり、12ヶ月以降に定期接種を2回やり直す必要あり
    72時間を過ぎた場合は 免疫グロブリン(IGIM)

🔹1歳以上の小児

1)MRワクチン2回接種済み

  • 追加接種不要
    経過観察のみ

2)1回接種のみ

  • 72時間以内:2回目のMRワクチン接種
    72時間を過ぎた場合は、ワクチンの効果が不確実なため  免疫グロブリン(IGIM)を検討

3)接種歴不明

  • 72時間以内:MRワクチン接種
    過剰接種の害はほぼなし

🔹家庭内に免疫のない人が複数いる場合

家庭内感染率は非常に高いため、 同居家族全員の接種歴を確認し、以下を行う:
免疫なし → 72時間以内にMRワクチン
妊婦・乳児 → 免疫グロブリン
2回接種済み → 経過観察のみ

文献