🍼 FPIES(食物蛋白誘発胃腸炎症候群)

FPIES(食物蛋白誘発胃腸炎症候群)とは


FPIESは「Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome(食物蛋白誘発胃腸炎症候群)」の略で、食物アレルギーの一種です。

ただし、一般的に知られている食物アレルギー(じんましんや呼吸困難が出るタイプ)とは仕組みが異なります。FPIESでは、特定の食べ物を食べた後、主に消化管(胃や腸)に強い反応が起こります。


症状

原因となる食べ物を食べてから 1〜4時間後 に、以下の症状が現れます

  • 繰り返す激しい嘔吐(最も特徴的な症状)
  • 顔色が悪くなる(蒼白)
  • ぐったりする(活気がなくなる)
  • 体温が下がる
  • ひどい場合は血圧が下がり、ショック状態になることもあります
  • 嘔吐の後、4〜6時間後に下痢が続くこともあります

一般的な食物アレルギーのように、じんましん・皮膚の発疹・呼吸困難は通常みられません。


有病率

  • FPIESは以前は非常にまれと考えられていましたが、最近の研究では 乳児の0.015〜0.7% に発症すると報告されています
  • 日本の大規模出生コホート研究(エコチル調査)では、保護者の報告に基づく有病率は 0.69%、医師が診断した有病率は 0.06% でした
  • 実際にはもっと多くの赤ちゃんがFPIESを経験している可能性がありますが、症状が胃腸炎や敗血症と間違われやすく、見逃されていることが多いと考えられています

最近増えている

FPIESの報告数は世界的に増加しています。これには2つの理由が考えられます:

  1. 認知度の向上:2017年に国際的な診断ガイドラインが発表され、医師がFPIESを正しく診断できるようになりました
  2. 離乳食の早期開始との関連:近年、IgE介在性の食物アレルギー予防のために、卵やピーナッツなどのアレルゲン食品を早期に導入することが推奨されるようになりました。日本でも2019年に厚生労働省の離乳食ガイドラインが改訂され、卵の早期導入が推奨されています。この早期導入の時期が、FPIESが起こりやすい「感受性の窓」と重なっている可能性が指摘されています

好発年齢

  • 発症のピークは生後4〜7か月です
  • 95%の子どもが 1歳までに 最初の症状を経験します
  • 牛乳によるFPIESは比較的早く(生後3〜4か月)、固形食(卵、魚など)によるFPIESは離乳食開始後(生後5〜7か月)に発症することが多いです
  • 男女差はほとんどありません

日本で多い原因食材

  • 鶏卵(卵黄を含む)
  • 牛乳
  • 大豆
  • 米・小麦などの穀類

一般的な食物アレルギーとの違い

項目一般的な食物アレルギーFPIES
仕組みIgE抗体非IgE(自然免疫)
発症時間数分〜2時間1〜4時間
症状じんましん・呼吸困難嘔吐・ぐったり
検査陽性が多い通常陰性

即時型食物アレルギー(IgE陽性)に変わることはあるか

FPIESは通常、一般的なアレルギー検査(血液検査や皮膚テスト)では陰性となります。しかし、経過中に約4分の1の子どもで原因食材に対するIgE抗体が陽性化することが報告されています。特に牛乳が原因の場合、IgE抗体が陽性となった一部の患者では、じんましんなどの即時型アレルギー症状を呈するタイプへ移行することがあります。

卵を原因とするFPIESでは、約9〜37%でIgE感作が認められ、牛乳ではIgE陽性例の約41%が即時型アレルギーへ移行したとの報告があります。このような背景から、FPIESと診断された場合でも、経過中にIgE抗体の評価を行いながらフォローアップすることが重要とされています。


治るのか(耐性獲得)

FPIESは多くの場合、成長とともに自然に改善しますが、その時期は原因食材によって異なります。牛乳や大豆では多くの症例が3〜5歳頃までに耐性を獲得するとされています。
一方で魚を原因とする場合は改善までに時間を要し、5〜10歳以降になることもあります。
卵については、おおむね4歳頃までに耐性を獲得する例が多いとされていますが、個人差が大きい点には注意が必要です。


対応方法

日常の管理

FPIESと診断された場合には、原因となる食材を一定期間完全に除去することが基本となります。一般的には最終の症状発現から12〜18か月程度の除去が推奨されています。
FPIESはIgE介在性アレルギーとは異なり、アドレナリン自己注射(エピペン)は有効ではないため、通常は処方されません。栄養バランスに配慮しながら、必要に応じて専門的な栄養指導を受けることも重要です。

🥚原因食材が卵黄・卵白の場合

卵黄と卵白は同じではありません。FPIESでは、「卵アレルギー」と一括りにせず、卵黄と卵白を別の原因食材として考えることが重要between 27 and 36 weeks of pregnancy.

🟢卵黄FPIESと卵白FPIESは別の病態

  • 卵黄と卵白は、それぞれ異なるタンパク質を含み、別々に反応することがあります
  • 実際の研究でも、卵黄が原因:32.9% 卵白が原因:20.5%と、別々に報告されています
  • 「卵=全部ダメ」とは限らないということです(Metbulut AP et al. Int Arch Allergy Immunol. 2022)

🟢卵黄だけが原因のことが多い

日本では離乳食で卵黄から導入するため、 卵黄のみで発症するFPIESが多い と考えられています


🟢卵白は食べられる場合もある

研究では、卵黄に反応した子どもが卵白を試したところ約88%は問題なく食べられた(陽性は12%のみ)と報告されています。 卵黄と卵白は必ずしも同時に除去する必要はありません(Ocak M et al. Allergy Asthma Proc. 2021)


🟢ただし実際の生活では「全卵除去」を指導することも多い

理論的には分けて考えますが、現実には、卵黄と卵白の完全分離が難しい、少量混入でも症状が出る可能性、家庭調理・園給食での管理の難しさから、安全を優先して、「一旦は卵全体を除去」→医療機関で確認後に解除という方法がよく取られます



🟢まとめ

  • 卵黄と卵白は別々に評価する
  • 必ずしも「卵すべて除去」が必要とは限らない
  • ただし実際の生活では安全のため全除去になることが多い
  • 再導入は必ず医療機関での経口負荷試験(OFC)で確認

FPIES 症状が出た場合の対応

原因食材摂取後に嘔吐が繰り返され、ぐったりしている場合には速やかに医療機関を受診する必要があります。
FPIESの急性期治療の中心は水分補給であり、点滴による補液が必要となることもあります。


再導入(食べられるかの確認)

原因食材を再び摂取できるかどうかの評価は、必ず医療機関で行う必要があります。
自宅での自己判断による再導入は重篤な反応を引き起こす可能性があるため推奨されません。
通常は最終の症状発現から12〜18か月後を目安に、医師の管理下で食物経口負荷試験を実施し、安全に確認します。

学校・保育園での対応


FPIESのある子どもが集団生活を送る際には、原因食材の完全除去が基本となります。
また、症状は摂取後すぐではなく1〜4時間後に出現するため、食後しばらく経過してからの体調変化にも注意が必要です。
じんましんや呼吸困難ではなく、繰り返す嘔吐や顔色不良、ぐったりする様子が主なサインであり、このような場合には速やかな医療機関受診が必要であることを、あらかじめ保育者や学校側と共有しておくことが重要です。


まとめ

🟠FPIESは一般的な即時型食物アレルギーとは異なる機序で発症する特殊な食物アレルギーであり、主に離乳食期の乳幼児に多くみられます。適切な除去と医療機関でのフォローアップを行うことで、多くの子どもが成長とともに耐性を獲得します。
再導入の時期や方法については必ず専門医と相談しながら慎重に進めていくことが大切です。


参考文献

Anvari S, Gupta M, Nicolaides R, et al.
The Evolution of Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome (FPIES): Global Trends, Emerging Triggers, and Natural History.

Caubet JC, Ford LS, Sickles L, et al.
Clinical Features and Resolution of Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome: 10-Year Experience.
The Journal of Allergy and Clinical Immunology. 2014.

Nowak-Węgrzyn A.
Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome and Allergic Proctocolitis.
Allergy and Asthma Proceedings. 2015.

Ullberg J, Fech-Bormann M, Fagerberg U.
Clinical Presentation and Management of Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome in 113 Swedish Children.
Allergy. 2021.

Lange L, Gernert S, Berger M, et al.
Different Patterns of Foods Triggering FPIES in Germany.
The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice. 2022.