日本のスギ花粉症と治療の最新知見
🌿 日本のスギ花粉症の現状
🟠スギ花粉症は日本人の約4割がかかる「国民病」であり、小児でも発症が増えています。学業・仕事・睡眠の質を大きく低下させ、集中力の低下や眠気による「プレゼンティーズム(出勤しているが本来の力を発揮できない状態)」が問題となっています。国内では年間数千億〜1兆円規模の生産性損失が生じていると推計されています。
レルギー性鼻炎は、喘息・アトピー性皮膚炎・食物アレルギーとも関連し、全身性アレルギーの一部として捉えることが重要です。
🌸 スギ花粉症の治療と「2週間前からの予防内服」
治療は以下の4本柱で構成されます。
1)アレルゲン回避
2)薬物療法
3)初期療法(予防内服)
4)舌下免疫療法(SLIT)
特に「初期療法」は重要で、花粉飛散の1〜2週間前から第二世代抗ヒスタミン薬を開始すると、鼻粘膜の炎症を早期に抑え、シーズン中の症状を軽くできます。
ビラスチンは眠気が少なく安全性が高い薬剤として知られています。フェキソフェナジンなども同様に安全性が高く、日中の活動を妨げにくい点が特徴です。
🌼 舌下免疫療法(SubLingual ImmunoTherapy:SLIT)とは
🟠アレルギーの原因物質を少量ずつ体に慣らし、体質改善(疾患修飾効果)を目指す唯一の治療です。
● 日本での実施人数(推定)
スギSLIT:約40〜60万人
ダニSLIT:約50〜70万人
(重複あり。延べ100万人以上が治療を経験したと推定)
公的な正確な統計はありませんが、学会レビューや市販後データからの推定値です。
🌈 SLITの効果と長期予後
SLITは多くの研究で効果と疾患修飾作用が示されています。
- 3年以上の継続で最大の効果が得られる
- 治療終了後も2〜3年は症状改善が続く例が多い
- 年数とともに徐々に効果が薄れ、数年以内に約半数で再燃
- 再発しても治療前ほど重くならない例が多い
- 再治療(再開)で再び効果が得られることも多い
- 副作用は口腔内の軽い違和感が中心で、安全性は高い
スギ花粉症に対するSLITは、将来の重症化や喘息リスクの低減が期待されており、日本人小児でも有効性が確認されています。
👦 小児におけるSLIT
小児でも大人と同様に効果があり、安全性も高い治療です。
十分な治療期間(3年以上)を継続できたかどうかが長期予後に最も影響します。
🌟 まとめ
スギ花粉症は生活の質や生産性に大きな影響を与える疾患です。
薬物療法・初期療法・舌下免疫療法を組み合わせ、患者さん一人ひとりに合った治療を選ぶことが大切です。
特に舌下免疫療法は、将来の喘息リスクや重症化を抑える可能性があり、長期的な視点での治療選択として有力です。
📚参考文献
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