🌻お盆の帰省で気をつけたいこと|赤ちゃんの暑さ・食事・寝具・犬猫アレルギー

お盆は、ご家族や親戚と過ごす楽しい機会です。
一方で、赤ちゃんや小さなお子さんにとっては、真夏の暑さの中での長距離移動、普段と異なる食事、長期間保管されていた寝具、犬や猫のいる環境など、体調を崩す原因が重なりやすい時期でもあります。
特に乳幼児は、自分で暑さや体調不良をうまく伝えることができません。
帰省前に、移動方法、食事、寝具、アレルギーの薬について確認しておきましょう。

【保護者の方へ】帰省前に確認しておきたいこと

☀️ 赤ちゃん・小さなお子さんの暑さ対策

子どもは体温調節機能が十分に発達していないため、暑さや脱水の影響を受けやすくなります。
移動中も、涼しい環境とこまめな水分補給を心がけてください。
母乳やミルクを飲んでいる赤ちゃんは、普段より授乳間隔や飲み方に注意しましょう。
離乳食が進んでいるお子さんには、月齢や普段の飲み方に合わせて、水や麦茶などを少しずつ与えてください。
🔸薄手で通気性のよい服を選ぶ
🔸直射日光を避ける
🔸可能であれば、朝や夕方の比較的涼しい時間に移動する
🔸移動中も顔色、汗、機嫌、尿の回数を確認する
🔸車内や室内では適切に冷房を使用する
ぐったりしている、反応が鈍い、顔色が悪い、水分を飲めない、尿が極端に少ないなどの症状がある場合は、すぐに涼しい場所へ移動してください。
意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が悪い、けいれんしている、自力で水分を飲めない場合は、救急受診が必要です。

🚗 車で移動するとき

夏の車内は、短時間で危険な高温になります。
エンジンを切った車内に、赤ちゃんや子どもだけを残すことは絶対にやめてください。
長距離移動では、1~2時間を目安に休憩をとり、水分補給、おむつ交換、体調確認を行いましょう。
チャイルドシートは、お子さんの年齢、体格、製品の説明書に合った方法で正しく使用してください。

✈️ 飛行機で移動するとき

飛行機の離着陸時には、気圧の変化によって耳が痛くなることがあります。
授乳、哺乳瓶、おしゃぶりなどで、吸ったり飲み込んだりする動作を促すと、耳の圧力調整に役立つことがあります。
特に着陸前の降下中に耳の症状が出やすいため、授乳などができるよう準備しておきましょう。
耳の痛みを防ぐ目的や眠らせる目的で、市販の抗ヒスタミン薬やかぜ薬を自己判断で使用しないでください。

🚃 列車や公共交通機関で移動するとき

混雑する時期には、感染症に接触する機会も増えます。
帰宅時や食事前の手洗いを心がけましょう。
発熱、繰り返す嘔吐、下痢などがある場合には、無理に移動しないことも大切です。

🍽️ 帰省先では、新しい食材を食べさせないでください

帰省先では、祖父母や親戚から、普段食べていない料理やお菓子を勧められることがあります。
帰省先で初めての食材を食べさせることは避けてください。
「少しくらいなら大丈夫」
「もう大きいから大丈夫」
という判断はできません。
食物アレルギーは、これまで症状がなかったお子さんにも、初めて食べた食品で起こることがあります。
初めての食材は、次の条件がそろう日に、自宅で少量から試してください。
初めて食べる食品は、年齢にかかわらず、帰省先では試さないでください。

🥜 クルミ・カシューナッツなどの木の実類に注意

近年、日本ではクルミをはじめとする木の実類による食物アレルギーやアナフィラキシーが増えています。
木の実類は乳幼児期に食べる機会が少なく、学童期以降に初めて食べることもあります。これまで食物アレルギーがなかったお子さんでも、注意が必要です。
帰省先では、次のような食品に木の実類が含まれていることがあります。
🔸ミックスナッツ
🔸クルミやアーモンド入りの焼き菓子
🔸チョコレート
🔸パンやケーキ
🔸ナッツペーストやナッツクリーム
🔸ナッツを使った料理やソース
クルミ、ピーナッツ、カシューナッツ、アーモンドなどを初めて食べる場合は、帰省先ではなく、自宅で少量から試してください。
また、硬い豆や粒のままのナッツ類は、食物アレルギーとは別に窒息や誤嚥の危険があります。
5歳以下の子どもには、硬い豆や粒のままのナッツ類を食べさせないでください。

🚑 食後に注意したい症状

食物アレルギーの症状は、食べてから数分~2時間程度で現れることが多くあります。
次のような症状に注意してください。
🔸じんましん、赤み、かゆみ
🔸まぶたや唇の腫れ
🔸繰り返す嘔吐
🔸強い腹痛
🔸咳、ゼーゼー、呼吸が苦しそう
🔸声がかすれる
🔸顔色が悪い
🔸急にぐったりする
顔や唇、のどが腫れる、呼吸が苦しい、声がかすれる、繰り返し吐く、ぐったりして反応が悪いなど、中等度以上の症状が複数現れるとアナフィラキシーの可能性があります。
このような場合は、すぐに119番へ連絡してください。
エピペン®やネフィー®を処方されているお子さんは、帰省中も必ず携帯し、使用方法と使用期限を事前に確認しておきましょう。

🛏️ ダニアレルギーがあるお子さんは、寝具を事前に準備してください

ダニアレルギーによるアレルギー性鼻炎、ぜんそく、アトピー性皮膚炎などがあるお子さんでは、帰省先の寝具によって症状が悪化することがあります。
布団、マットレス、枕には、ダニの死骸やふんに含まれるアレルゲンが蓄積します。
長期間押し入れなどに保管されていた布団には、多量のダニアレルゲンが残っている可能性があります。
帰省のたびに、次のような症状が出る場合は、寝具の影響が考えられます。
🔸布団に入ると鼻水やくしゃみが増える
🔸夜間や明け方に咳が出る
🔸目や皮膚がかゆくなる
🔸ぜんそく症状が悪化する

☀️ 天日干しはダニアレルゲンを除去できません

天日干しでは、布団に蓄積したダニの死骸やふんなどのアレルゲンを除去できません。
布団を干したり、たたいたりすると、アレルゲンが空気中に舞い上がることがあります。

🧺 布団は丸洗いしてください

帰省先では、次のいずれかを準備してください。
🔸布団クリーニングで丸洗いした布団
🔸適切に洗浄・整備された貸布団
🔸普段使用している清潔な寝具
シーツと枕カバーも、洗濯したものを使用してください。
防ダニシーツや防ダニカバーは、単独では症状の改善効果がありません。
帰省先の寝具には、丸洗いした布団または適切に洗浄・整備された貸布団を使用してください。

💊 ダニアレルギーやぜんそくの薬は継続して下さい

帰省中も、普段使用している抗ヒスタミン薬、点鼻薬、吸入薬などは、医師の指示どおり継続してください。
ぜんそくがあるお子さんは、毎日使用する薬だけでなく、発作時に使用する吸入薬も持参しましょう。
次のような場合は、帰省前にかかりつけ医へ相談してください。
🔸毎年、帰省すると咳や鼻症状が悪化する
🔸最近ぜんそく発作があった
🔸夜間や運動時の咳が増えている
🔸発作時の対応に不安がある
帰省先の近くにある休日診療所や救急医療機関も、事前に確認しておきましょう。

🐶🐱 犬・猫アレルギーがあるお子さんへの対策

犬や猫を飼うこと自体に全く問題はありません。
ただし、犬や猫を飼育したまま、犬猫アレルギーのあるお子さんにとってアレルゲンの影響を受けない家庭環境をつくることは困難です。犬猫アレルギーのある人と犬や猫が同じ生活環境で過ごす場合の、医学的な限界です。
犬や猫のアレルゲンは、毛だけに存在するものではありません。
唾液、皮脂、フケなどに由来する細かな粒子が、空気、床、じゅうたん、ソファ、カーテン、寝具、衣服など、家全体に広がっています。
そのため、犬や猫が普段生活している家では、動物が入らない部屋にもアレルゲンが存在します。

🚪 犬や猫を別室にしても、アレルゲンへの曝露は避けられません

次のような方法では、犬猫アレルゲンへの曝露をなくすことはできません。
🔸犬や猫を別室に移す
🔸子どもとペットを別の部屋で過ごさせる
🔸子どもがペットに触らないようにする
🔸寝室に犬や猫を入れない
🔸滞在前に掃除をする
🔸空気清浄機を使用する
🔸滞在前に犬や猫を洗う

💊 毎年症状が出る場合は、帰省前に受診してください

犬や猫を飼っている家へ行くたびに、目のかゆみ、鼻水、くしゃみ、咳、ゼーゼー、皮膚症状などが出る場合は、帰省前にかかりつけ医へ相談してください。薬を使用しても、犬猫アレルゲンへの曝露そのものをなくすことはできませんが、症状を楽にすることはできます。
使用する薬には、抗ヒスタミン薬、抗ヒスタミン点眼薬、ステロイド点鼻薬、ぜんそくの吸入薬などがあります。
必要な薬、使用開始時期、使用量は、お子さんの年齢や症状によって異なります。市販薬を自己判断で使用せず、医師の指示に従ってください。

🧳 帰省時の持ち物チェック

🔸母子健康手帳
🔸マイナ保険証
🔸医療福祉受給者証
🔸普段使用している薬
🔸ぜんそく発作時の吸入薬
🔸エピペン®ネフィー®(処方されている場合)
🔸薬の説明書やお薬手帳
🔸体温計
🔸着替え
🔸帽子や日よけ用品
🔸普段飲み慣れている飲み物
🔸かかりつけ医の連絡先
🔸帰省先近くの休日診療所・救急医療機関の情報

🌻 楽しい帰省にするために

帰省先では、移動、暑さ、食事、寝具、動物との接触など、普段と異なる環境が重なります。
大人にとっては小さな変化でも、赤ちゃんやアレルギーのあるお子さんにとっては、大きな負担になることがあります。
帰省前に、次の4点を確認してください。
🔸暑さと脱水を防ぐ
🔸帰省先で初めての食材を食べさせない
🔸ダニアレルギーがある場合は、丸洗いした布団または貸布団を用意する
🔸犬猫アレルギーがある場合は、飼育環境に滞在する限り曝露を避けられないことを理解する
毎年帰省時に症状が出るお子さんや、薬の使い方に不安がある方は、帰省前にかかりつけ医へご相談ください。

【医学的根拠と補足資料】

📊 日本では木の実類によるアナフィラキシーが増加しています

日本の小児食物誘発アナフィラキシーを対象とした多施設後方視研究では、原因食品に占めるクルミの割合が、2011年の3.2%から2021年には26.1%へ増加しました。
クルミが原因だったお子さんでは、発症前にクルミアレルギーと診断されていた割合が、ほかの原因食品によるアナフィラキシーと比べて低いことも報告されています。[1]
愛知県内の救急医療機関を対象とした小児アナフィラキシーの調査でも、原因食品に占める木の実類の割合が、2017年の6.0%から2019年には15.0%へ増加しました。[2]
木の実類は、乳幼児期に食べる機会が少なく、年齢が上がってから初めて食べることがあります。
帰省先で新しい食材を試さないことが、最も重要な予防策です。

🥜 硬い豆やナッツ類には窒息の危険もあります

硬い豆やナッツ類は、食物アレルギーとは別に、窒息や誤嚥の原因になります。
消費者庁は、5歳以下の子どもには、硬い豆や粒のままのナッツ類を食べさせないよう注意喚起しています。[3]

🧺 洗濯はダニとダニアレルゲンを除去します

ダニ対策では、ダニを死滅させることだけでなく、ダニの死骸やふんに含まれるアレルゲンを寝具から除去する必要があります。
ダニが死滅しても、死骸やふんが寝具に残れば、アレルギー症状の原因になります。
洗濯では、水に浸すこと、洗剤を使用すること、すすぎによって物理的に洗い流すことにより、ダニとダニアレルゲンを減らすことができます。
天日干しでは、すでに寝具に蓄積しているダニアレルゲンを除去できません。帰省先で長期間保管されていた布団は、天日干しではなく、丸洗いが必要です。

🛡️ 防ダニシーツの単独使用では症状改善効果がありません

防ダニシーツや防ダニカバーを単独で使用しても、ぜんそく症状などの改善効果は示されていません。
防ダニシーツだけを使用する方法は、ダニアレルギーの対策にはなりません。
帰省先では、防ダニシーツの購入よりも、丸洗いした布団または適切に洗浄・整備された貸布団の使用を優先してください。

🐶🐱 犬・猫アレルゲンは家全体に広がります

犬や猫のアレルゲンは、唾液、皮脂、フケなどに由来し、非常に細かな粒子として室内に広がります。
アレルゲンは、床、じゅうたん、ソファ、カーテン、寝具、衣服などに付着します。
犬や猫が入らない部屋にも存在し、衣服に付着して、犬や猫を飼っていない建物へ運ばれることもあります。
そのため、犬や猫を別室に移しても、子どもが動物のいない部屋で過ごしても、アレルゲンへの曝露を避けることはできません。

🚪 飼育を続けたまま、曝露のない家庭環境をつくることは困難です

犬猫アレルギーに対して、別室、掃除、空気清浄機、寝室への立ち入り禁止、動物の洗浄などによって、症状を確実に改善する十分なエビデンスはありません。
犬を洗うと、犬の毛に付着している犬アレルゲンは一時的に減少します。
しかし、数日で再び増加するため、犬を洗うだけでは、家庭内での症状を防ぐ対策にはなりません。

🐾 動物がいなくなった後もアレルゲンは残ります

猫が生活していた住宅では、猫がいなくなった後も、室内の猫アレルゲンが十分に低下するまで数か月かかることがあります。
帰省の直前に犬や猫をほかの場所へ移しても、室内に蓄積したアレルゲンへの曝露を防ぐことはできません。

参考文献

[1] Iwashita Y, Kajita N, Yoshida K, et al. Eleven-Year Trends in Walnut-Induced Anaphylaxis in Children in Japan: A Multicenter Retrospective Study. Pediatric Allergy and Immunology. 2025;36:e70243.
[2] Kitamura K, et al. Time Trends of Triggers and Adrenaline Use in Pediatric Anaphylaxis in Aichi, Japan. Allergology International. 2021.
[3] 消費者庁.食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意―硬い豆やナッツ類等は5歳以下の子どもには食べさせないで―.2021.
[4] Arlian LG, Vyszenski-Moher DL, Morgan MS. Mite and Mite Allergen Removal During Machine Washing of Laundry. Journal of Allergy and Clinical Immunology. 2003;111:1269-1273.
[5] Portnoy J, Miller JD, Williams PB, et al. Environmental Assessment and Exposure Control of Dust Mites: A Practice Parameter. Annals of Allergy, Asthma & Immunology. 2013;111:465-507.
[6] Cloutier MM, Baptist AP, Blake KV, et al. 2020 Focused Updates to the Asthma Management Guidelines: A Report from the National Asthma Education and Prevention Program Coordinating Committee Expert Panel Working Group. Journal of Allergy and Clinical Immunology. 2020;146:1217-1270.
[7] Portnoy J, Kennedy K, Sublett J, et al. Environmental Assessment and Exposure Control: A Practice Parameter—Furry Animals. Annals of Allergy, Asthma & Immunology. 2012;108:223.e1-223.e15.
[8] Hodson T, Custovic A, Simpson A, Chapman M, Woodcock A, Green R. Washing the Dog Reduces Dog Allergen Levels, but the Dog Needs to Be Washed Twice a Week. Journal of Allergy and Clinical Immunology. 1999;103:581-585.