🍼よくある症状と安心の対応
-生まれてすぐ〜3か月-
💖赤ちゃんが泣き止まないときは
🔴生後1か月の赤ちゃんは、泣くことで自分の気持ちや必要を伝えます。泣く理由には「空腹」「おむつが濡れている」「暑さ寒さ」「眠い」「不快感」「退屈」「体調不良」などがあります。
この時期の赤ちゃんは1日に1〜3時間ほど泣くことが普通であり、ほとんどの場合病気ではありません。
🟢解剖学的・機能的背景として、泣きは大脳皮質よりも脳幹反射に依存しており、言語を持たない乳児にとって泣きは唯一のコミュニケーション手段です。
消化管はまだ未熟で、胃食道接合部が逆流しやすく、腸管運動も不安定です。
排便リズムも腸管神経系の成熟が進行中で一定しません。
🌸 赤ちゃんを落ち着かせる方法としては、抱っこや肌と肌のふれあい(カンガルーケア)、授乳やミルク、おむつ交換、やさしく揺らす・歌う・話しかける、おくるみや静かな環境、お腹のマッサージや背中をさするなどがあります。
泣き止まないときは安全な場所に寝かせ、保護者も休憩をとることも選択肢に。
🍼 溢乳(いつ乳)
🌱生後1〜3か月の赤ちゃんは胃が未熟で吐き戻しやすい時期です。胃の入り口である下部食道括約筋(LES)が未発達で逆流防止機能が弱く、胃の形態は成人に比べ縦に近いため重力で逆流しやすくなります。
胃容量が小さいためすぐ満杯になり、少しの刺激で吐き戻しが起こります。
さらに胃から腸への排出が遅く、内容物が滞留しやすいことも逆流の原因になります。授乳時には空気を飲み込みやすく、げっぷが出ないと胃内圧が上がり逆流を助長します。
🔍このような解剖学的・機能的背景から、吐き戻しは乳児期に非常によく見られる現象です。元気で哺乳し、体重が増えていれば心配は不要です。
🤢ただし、緑色(胆汁様)の嘔吐、血が混じる嘔吐、噴水状の嘔吐、体重増加不良などがある場合は器質的疾患を疑い、医師に相談する必要があります。
💩 便秘
🟢生後1か月児で排便が4〜5日に1回でも、嘔吐や腹部膨満がなく機嫌や哺乳状態が良好であれば正常範囲の変動と考えられます。
この時期の排便回数は個人差が大きく、母乳栄養児・人工栄養児ともに数日間排便がないことは珍しくありません。
便色についても、乳児期は緑色便が頻繁にみられ、特に異常所見がなければ心配不要です。
🟢一方で、腹部膨満や嘔吐などの消化管閉塞症状がある場合は器質的疾患(ヒルシュスプルング病など)を疑い、精査・治療が必要となります。
🚨アラームサイン(機嫌不良、腹部膨満、嘔吐、体重増加不良など)が認められる場合は、浣腸や薬物療法を含めた介入を考慮しますが、まずは器質的疾患の除外が重要です。
🟢便秘の多くは機能性であり、アラームサインがなければ保護者への説明と経過観察が基本です。
症状が持続・悪化する場合は再評価が必要です。薬物療法は器質的疾患が否定された場合に限り慎重に行われます。
🟢第一選択はポリエチレングリコール(PEG)で、便を柔らかくする効果があります(日本では2歳以上で適応あり)
ラクツロースも新生児に安全に使用できます。
酸化マグネシウムは日本で広く使われますが、新生児では高Mg血症のリスクがあり注意が必要です。
刺激性下剤(ラキソベロンなど)は新生児には推奨されません。
🟢グリセリン浣腸は一時的な便塊除去に有効ですが、繰り返し使用は避けるべきです。ただし、すでに硬い便塊(便栓)が形成されている場合には、服薬のみでは改善が難しいことがあります。浣腸などの処置を併用して便を取り除いたうえで、生活習慣や薬物療法を継続していきます。
📚 参考文献
Akaike T, Fukasawa T, Yanai T, et al. Patterns of Laxative Use in Japanese Children. Pediatr Int. 2025.
Zeevenhooven J, Browne PD, L'Hoir MP, et al. Infant Colic: Mechanisms and Management. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2018.
Möller EL, de Vente W, Rodenburg R. Infant Crying and Calming Response. PLoS One. 2019.
Rosen R, Vandenplas Y, Singendonk M, et al. Pediatric Gastroesophageal Reflux Guidelines. JPGN. 2018.
Singendonk MM, Rommel N, Omari TI, et al. Upper GI Motility in Infancy. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2014.
Solasaari T, et al. Bowel Function in Healthy Term Infants. Eur J Pediatr. 2024.
Muhardi L, et al. Early-Life Gut Health Indicators. Nutrients. 2023.
Tabbers MM, DiLorenzo C, Berger MY, et al. ESPGHAN/NASPGHAN Guidelines on Constipation. JPGN. 2014.
Wells H, et al. Distal Intestinal Obstruction in Neonates. Pediatr Surg Int. 2024.
de Geus A, Gordon M, Sinopoulou V, et al. Pharmacological Therapies for Functional Constipation. Lancet Child Adolesc Health. 2025.
🧴 乳幼児のスキンケアと保湿剤使用(ガイドラインとエビデンス)
スキンケア
🛁 洗浄の基本
顔も含めて毎日入浴
石けんの泡でやさしく洗う(摩擦を避ける)
しっかりすすいで石けん成分を残さない
🧴 保湿の基本ルール
健常児は必須ではないが、乾燥があれば保湿
高リスク児には予防的に保湿を推奨
十分量を塗ることが大切(薄塗りでは効果が不十分)
保湿剤と薬は「混ぜない・同時に重ねない」
スキンケア
🌱 赤ちゃんのタイプ別に推奨が異なります
家族にアレルギー歴のない健常乳児・幼児
保湿剤の routine な全身使用は必須ではなく、積極的な推奨もされていません。
乾燥がある場合には使用が有用とされています。
家族にアレルギー歴がある高リスク乳児
アトピー性皮膚炎・喘息・アレルギー性鼻炎などの家族歴がある場合には、予防的に保湿剤の使用が推奨されています。
剤形(ローション・クリーム・軟膏など)は問わず、家庭で続けやすいものを選択することが望ましいとされています。
📖 学会の立場
日本皮膚科学会・日本アレルギー学会(ADGL2024)
健常児:保湿は必須ではない。乾燥があれば使用。
高リスク児:保湿推奨。剤形は問わず、外用薬との混合・同時塗布は避ける。
日本小児科学会
清潔+必要時保湿。予防目的で一律必須とはせず、高リスク児には保湿推奨。
日本小児アレルギー学会(PADGL2024)
ADGL2024準拠。健常児は必須ではない。高リスク児には保湿推奨。
📅 保湿剤推奨の変化(アトピー性皮膚炎予防の観点)
2018年版:保湿で予防効果ありと期待。
2021年改訂版:効果は限定的と修正。
2024年版:健常児には「必須ではない」と明記、高リスク児には推奨。
📖 エビデンス
BEEP trial(英国、Lancet 2020)
高リスク乳児に毎日保湿してもアトピー予防効果は認められず、皮膚感染症リスク増加が示唆された。
PAF study(日本、JEADV 2023)
一部保湿剤で予防効果が示唆されたが、結果は限定的であり、健常乳児に一律で保湿を必須とする根拠にはならないと判断された。
🟡 まとめ
2024年の時点では、新生児・健常乳児への routine な保湿剤使用は必須ではなく、積極的な推奨もされていません。
高リスク乳児には保湿剤の使用が推奨されています。
個々の皮膚の状態や家族歴に応じて保湿の必要性を判断することが大切です。
